例の事件によって、DV保護のあり方について議論が起こり始めています。
今朝の朝日新聞一面に記事がありました。
DV保護が認められると、被害者は加害者から隔離されます。
関わってみてわかったのですが、ほぼ完全な隔離状態に置かれます。
これは、保護の見地からは正しいことであると思われます。
調査によれば、申立率の高低は、取下げ率の高低と重なるといいます。
この点も問題であるとは思います。
申し立てをしても、関係諸機関の説得に遭い、申立を見合わせる、申し立てても取下げるということも窺えるかの指摘もあながち間違いではないといえましょう。
ただ、完全な隔離は夫婦関係・親子関係の事実上の終了を意味します。
成人した男女が関係を終了させること、そしてその際、DVがあるために関係諸機関から救済を受けられることは良いことです。
ただ、未成年子のある夫婦間の場合、親子関係をも事実上終了させてしまいかねないことなので、いくらか配慮が必要なのではないかと思います。
DV事案で、重大事件に発展することがないように、DV申告があれば必ず受理し、手続を進める。
そして、取下げ申出があっても、慎重に調査して、思いとどまらせるべきでしょう。
そうではあるけれども、DV保護は、崩壊した家庭から弱者を救いますが、崩壊していない家族関係をも壊しかねない両刃の剣でもあるのです。
保護は必要だし、申立があれば必ず即時隔離は必要だとは思います。
しかし、全てのケースが完全隔離するだけでよいかというと、それも問題であると思います。
そして、心理状況やメンタルヘルスの専門家(心理学者、心理療法士、精神科医等)がもっと関与し、事情に応じて、環境調整できるようなシステムが必要なように思います。
制度や理念がよくても、正しく運用がなされなければなりません。
そして、其の為には、運用者側の意識を高めることともに、強大な措置であるために、エラーを少なく(特に子どもに不利益がないように)するために、専門家による調査助言を制度に取り込んで欲しいと思う次第です。
それにしても、DV事案は難しい。
人間の感情や心理の絡む事件が一番難しい。
若手の法律実務家には、家事事件を一般民事事件と同様に考えたり、一般民事事件よりも法律上の争点が少ないかはっきりしていることで軽く考えたりする人もいないではないですが、家事事件は、むしろ難しい。
そして、何よりもDV的な事案は難しいですね。
DV的な事案は、被害者側、加害者側どちらも経験しましたが、難しいタイプの事件だと思います。