昨日は新しい経験をしました。
移動時間を節約したい、車を持つよりお得かもしれない、…理由はさまざまですが、わたしたちの同業者はタクシーを比較的よく利用します。
昨日も午後6時前に、会合の場所に向かうため、事務所の入っているビルの目の前でタクシーに乗りました。
丁度、赤信号で止まっていたタクシーの運転手さんに、目ぶり手振りで合図してのせてもらえるか確認して、ドアが開いたので、乗せてもらいました。
ところが、間もなく降りざるを得なくなりました。
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どこまで?
急いでいるので助かりました。新栄交差点あたりです。逆方向ですが、遠回りでもよいです。地図がありますから。
いや、いらん。新栄ならわかる。
…はぁ。そうですか、
(無言で動かず)
(メーター倒さず、一点を見ている)
(青信号になり、後続車両が追い越して行こうとする)
…あの〜、何かの他に忙しいのなら別のタクシーにしてもいいんですが。
じゃ、降りて。(「て」を強調するアクセントで、ドアを開けられ、また無言)
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わたしは複雑な思いをもってタクシーを降りました。
別に酷い態度でお願いしたわけでもなく、比較的近いとはいっても、よく考えたら名古屋駅より遠い。1,500円くらいはかかってしまいます。
そこで、2台後ろにいた別の会社のタクシーに乗車しました。
この件について、運転手さんに相談しました。
その運転手さんは、明快に答えてくれました。
・乗車拒否に当たる。
・タクシー会社に苦情を言う(同業者として積極的には勧めない)。
・なぜ、その運転手が乗車拒否をしたか、その理由はよくわかる。
最後の乗車拒否の理由を知りたくなりました。
運転手さんは、親切に丁寧に教えてくれました。
それは、ナゴヤドームで開催されている、中日ー阪神戦が原因だというのです。
時刻は、午後6時前後、試合開始直前です。
恐らく、乗車拒否の運転手は、名古屋駅前のタクシーベイに入る権利があったのだろう。タクシーベイは、この時間流れがいい。1〜2時間待たなければならなのがざらな場所だが、今なら15分も待てば済む。そして、名古屋駅前のベイからは、試合開始時刻前後には、ナゴヤドームに行く客が非常に多い。
ナゴヤドームであれば、通勤渋滞も始まっていることもあり、かなりいい料金が出る(4,000円くらいいくのか?)。
だから、名古屋駅前に行くというなら乗せようと思って、乗車拒否の運転手は始めにドアを開けたのだろう、と。
非常に明快でした。
短時間でできるだけ多く売り上げを挙げたい、楽に売り上げを挙げたいと思うのは人の常です。それは誰にだって同じこと。それを批判するつもりはありません。
しかも、乗務は激務であり、イヤな思いをすることも少なくない現場で一所懸命働いてみえるわけですから。
ただ、サービス業は複雑です。
一度に稼ぐ金額は知れています。長い目で見なければならない場合もあります。
その人と、その人の背景にいる人たちが、今後のお客であったりするのであり、1人の安価な商品を購入するはずだったお客を失うことが、そのお客とそのお客の関係者全員を失うことにもなりかねません。
ユニークセールスポイントといって、その人しか提供できないサービスを持っているというのであれば、多少応対が悪かろうと、人は我慢してそのお客になったりしますが、代替可能なサービスしか提供できないのであれば、「もうあなたには頼まない。」「あなたの会社とは取引しない。」ということを言われてしまいます。
どうしてもできない、やりたくないというのであれば、それなりの態度をもって相手に理解してもらえるように説明しなければなりません。
どんな職場でも似たようなことは起こりえます。
サラリーマンであっても、家庭に帰れば大黒柱で社長でもあるから、自分の収入を上げて行くという「経営」を考えなければなりません。そのためには、所属する会社が儲かるようにしなければなりません。よい顧客を増やすことを考えなければなりません。
サービス業、およそ職業というものは、他の人に喜んでもらって対価をいただくものだという原点に戻って行かなければなりませんね。
我が身を振り返り考えさせられる経験でもありました。