関係者の思いが重いという事件は、できれば避けたいものですが、わたしたちごく普通の弁護士にとっては、受任事件のほとんどがそういう事件です。
ひとつの出来事であっても、見方によってさまざま。
互いの主張が180度異なる事件もざらにあります。
訴状や準備書面を書いていて、ご本人の思いに胸が痛むこともあります。
しかし、心の中で泣きながらも、書面ではできるだけ事実を中心に書いていきます。
「どうしてそんなに冷静で公平なのですか!」と厳しいご指摘をいただくこともあります。それで、たまには厳しく書くこともあります。
ただ、事の善悪は神のみぞ知る。
どんなに抽象的で情緒的な言葉を重ねても、第三者は引いて行くばかりです。
重い事件であるからこそ、事実を積み上げていき、裁判所に事情をご理解いただくという行き方にならざざるを得ません。
…それにしても、重い事件で、事実を積み上げて行くだけの書面だって、書くのはなかなかしんどいものです。攻撃的な書面でも、防御的な書面でも、それは同じこと。
どんなにソフィスティケートさせても、重い事実というものはやっぱり重いものですね。
「泣くものとともに泣き、喜ぶものとともに喜ぶ。」
代理人というものは、そういうものでありたいです。
泣きながら、泣きしゃべりをしながらも、ご本人と裁判所をリードしていかなければなりません。
そして、最後にともに喜びたいですね。