「なぜあなたは我慢するのか」(V・ハワード、日本教文社)
ハワードの「説得力」(創元社)が、とても良かったので、別の著作を読んでみました。
スピリチュアル、ニュー・エイジ、…いろいろな言葉が浮かびました。
「あとがき」によりますと、ハワードは、この本が最初に日本で出版された時点(昭和55年)で、累計600万部を売った著者だとあります。
今でもHPがあって、沢山の著書や講演CDが売られています。
アメリカは、プラグマティックで、物質文明の先端を行くようで、こういう内面の探求といったテーマの本も売れるのですね。
もとは宗教(プロテスタント・キリスト教)の国。
多くの教会が、外部的、儀式的、儀礼的な宗教になっていることに対抗し、宗教のまといを捨て去って、純粋に個々人の魂の問題を探求しようという人も出やすいし、受けるのでしょう。
この本の、前半では、他者とか自然とか全宇宙とかの一体性について意識することが書かれています。
(「対立ではなく、一体であることこそが現実であり、…幻想のうちに築かれた友と敵は消え…(る)。p.54)
少し後の方には、自分の抱えている問題と自分自身とは別個独立であることが書かれています。
(「計画が突然に失敗に終わったからといって、…あなたの計画をあなただと思い込んではいけない。…あなたの計画はあなたではない。…自分のたてた計画あるいは自分の所有物が、われわれが「自己」と読んでいるものを構成していると誤って思い込む…。p.128)
この、一体性と独立性の二立対立をどう止揚するかは、まだ読了していないので、わかりません。
ただ、「説得力」(創元社)が実際的であるのに対して、この本は、もう少し内面に入って行っています。
誤解を恐れずに言えば、「他者をどう説得するか」ではなく、もう、一種「悟り」の境地にまで行っていますね。
仏=ほどけた人、と正観さんが書いていたように思いますが、この本では、こだわりや敵意や哀しみをどうやって捨てて、ほどけて行くか。どういうふうに考えたらいいのか、を淡々とではあるけれど(狂信的にではなく、知的に)、数々の決め台詞(殺し文句、インパクトの強い文章)をちりばめて、語られています。
時には立ち止まって、考えてみるとよいかも知れません。