*借金整理についてはご相談も多いので、わたしが数年前に書いたままにしておいた軽めの読み物を毎日少しずつアップさせていただくことにしましす。(お気づきかもしれませんが、日記を更新する時間が取れないときほど、この読み物のアップ量も多くなりったりします)
・会社の民事再生の実例
消費者金融業者ではなく、会社や個人事業者への銀行融資の場合、保証協会による保証が付されていて、返済が度々滞って事故扱いになると保証協会が代位弁済して銀行に代わって新たな債権者として登場します。私の事務所で扱った負債六億円の株式会社の民事再生のケースでは、返済率を二割一分にした計画案でした。このとき保証協会が最大の債権者で議決の帰趨を握っていましたので、保証協会が同意してれるかどうか不安でした。そこで、事前に保証協会に打診したのですが、担当者の方によれば二割程度の返済率でしかない民事再生計画案でも十分決裁は通っているとのことでした。そのケースでも結果は上々、保証協会が同意してくれて、一部の債権者が反対しただけで民事再生は成功しました。
・個人の通常再生の場合の実例
また、個人事業者の方で、負債が一億円程度あった方の通常の民事再生では、約七百万円を五年で支払終えるという再生計画案が認可されました。
このケースでも、およそ七分の金額を五年で支払うという、大幅な減額とゆるやかな返済が認められました。約七百万円を五年で、というのも大変なことかもしれません。しかし、この方には、年金保険や金融商品その他の高額財産がありました。破産するとなれば、これら財産を即時裁判所の管理下に引き渡し、売却処分されてしまいます。無理をしてでも、これらの財産を守りたい事情がありました。そこで、民事再生にしたのですが、減額割合から見ると、私が扱ったケースでは最高の減額割合になりました。
・個人再生の場合の最低弁済額と実例
住宅ローンを除く借金総額が三千万円を超えない個人再生の場合の減額についての下限額は、次のように定められています。
1.借金の総額が三千万円を五千万円以下の場合、十分の一。
2.借金の総額が三千万円以下の場合、総額の五分の一(上限は三百万円)又は百万円のより多額な方。
私の取り扱った個人再生の例では、約二千万円あまりの負債を抱えた債務者の件で、総額三百万円を五年間かけて分割払で払うという再生計画案が認可されました。
この方のはお気の毒な事情にありしたがうまく行った例です。
依頼者は、普通のサラリーマンでした。月給が二十五万円程度、ボーナスが年約五十万円、奥さんと保育園に通う子供一人の家族です。身内の連帯保証人になり、その本人が行方をくらましてしまいました。そのために、突然約二千万円あまりの負債を抱えることになったのでした。このケースでは、およそ一割五分の金額を、五年にわたって分割で払っていくとういう、破産せずとも十分に支払って行ける条件になり、一家の生活は救われました。
・ 差押え、競売の中止が可能
民事再生手続開始の申立がなされると、再生手続内で全ての借金の整理をして申立人の再生を図るため、債権者による強制執行、民事保全処分等による差押その他の執行の中止がなされます。受託ローンを除く債務が三千万円以下の個人債務者の民事再生手続では、申立と同時もしくは申立後直ちに執行手続の中止命令を申し立てることにより、執行の中止を得ることができます。
・ デメリット
民事再生は、恐らく破産を避けつつ再起、再建を図ろうという債務者にとっては、最もメリットの大きい手続だと思います。
破産同様、官報に氏名、会社名が掲載されること、金融機関のブラックリストに載り信用取り引き(借金等)が5〜7年間はできなくなるというデメリットはあります。
その他強いてデメリットを上げれば、手続費用がいくらか高額になるということです。
別にご説明したとおり、個人再生では、弁護士費用が四十〜六十万円かかります。会社の民事再生では、弁護士費用が百万円以上、公認会計士も必要になりさらに五十万円から百万円程度、さらに裁判所への予納金が百五十万円程度かかります。
法人や個人事業者の民事再生では、費用がかかってもいたしかたないでしょう。事業継続と代表権維持といったメリットはあるわけですから。「支払が苦しいな」と思い始めたときから、着々と資金を確保していくしかありません。また、当座の運転資金も確保しなければなりません。
個人再生では、弁護士に依頼しなくても申立はできます。
但し、弁護士に依頼しない場合、裁判所からは債務者の財産や収入の調査等の役目をする「個人再生委員」という人が選ばれることが多いようです。その場合、この「個人再生委員」のための費用として、申立のための印紙切手代金とは別に、裁判所に約十万円から三十万円を納付しなければなりません。(* )⇨「個人再生委員」
そうすると、弁護士に依頼しないである程度安くすませるか、全部弁護士に任せて楽をするか、という判断になります。
この他、自分だけで手続を進めていくには、破産に比べていくらか手続が面倒だということもデメリットと言えるでしょう。