・ 事件屋(コンサルタント?)
以上の二つのタイプの業者は、明らかに違法行為を行う犯罪者達であると言えます。
しかし、はっきりと犯罪者とは言えないように思える違法行為を行うコンサルタントもいます。
例えば、こういう業者は、債務者に代わって債権者と交渉します。借金を減額してもらったり、支払回数を増やして繰り延べしてもらったりします。要するに、後で述べる「任意整理」という借金整理を行ってくれるのです。そして、その報酬も数万円から百数十万円までいろいろあり、債務者に返済原資が全く無くて報酬を払えないような場合、業者によっては、取引実績のないサラ金業者から新規で借金させたり、クレジットカード枠を利用して換金させたりして、自分の報酬に充てるようです。
ただ、これも、報酬確保の仕方の問題性以外に、弁護士法七二条という法律に違反し、刑事処分を受けるべき犯罪となる可能性があるのです。(場合によったら、警察による逮捕もあるわけです。)(注、H17.2.14岡山県内で、任意整理や破産事件を業として扱っていた行政書士資格者が同条違反で逮捕され、H18.3.6起訴されたとのニュースがありました)
この弁護士法七二条は、次のような内容の条文です。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異義申立て、…その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
任意整理、すなわち「債務者に代わって債権者と交渉し、債権者に借金を減額させたり、支払回数を増やして繰り延べさせたりする行為」は、法律事件です。
したがって、司法試験という国家試験に合格して、研修を修了し、弁護士として登録した者でなければ、報酬を得る目的ではすることはできません。
そして、この条文に違反する行為については、弁護士法七七条第三項により、「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する」とされています。
要するに、弁護士資格者以外が、コンサルタントとして、報酬を貰う目的で、債務者に代わって債権者と交渉し、債権者に借金を減額させたり、支払回数を増やして繰り延べをさせることは、犯罪として刑罰に処せられるということなのです。
どうして、こういう条文があるかというと、国民の権利義務に直接かつ深刻に関わる法律事件について、専門的知識、能力を備えていると判断される司法試験合格者にして研修を修了して弁護士登録をした者のみに業として処理することを許すことによって、国民の利益を確保するためなのです。弁護士は司法試験という試験に合格しただけではありません。1年半の研修を受けます。さらに、弁護士となってからも、所属弁護士会の監督を受け、能力維持や倫理確保のための研修に参加をすることになっています。
要するに、専門的な知識や能力、倫理観を持たない事件屋によって法律問題で苦しんでいる人たちが食い物にされることがないようにする、という目的の条文なのです。この条文に違反して業者が関与した任意整理自体が無効とされることがあります。(注:H17.8.31福岡高裁宮崎支部で破産申立を業として取り扱った行政書士資格者と依頼者との契約が弁護士法72条違反と認定され、同行政書士に対する報酬支払義務の不存在を言い渡した判決があります。行政書士資格者でも弁護士法72条違反であり、全くの無資格者ならなおさらです。)
最初に紹介したAモータースの遺族の方達には保険金という借金の返済原資がありました。
返済原資がある場合には、事件屋の食い込みもしつこいようです。
事件屋には専門的知識が十分かどうか保証されません。果たして、依頼者である債務者の利益を十分に配慮した倫理観ある処理が期待できません。事件屋は違法行為と承知で事件に関与しているので、当初から無責任体質です。実際には、債権者側の人間であって、もっぱら債権者と自分の利益のために動く業者もあるのです。
無資格の「自称専門家」には、よくよく注意してください。
厳しい取り立てに遭い、精も根も尽き果て、「専門家」に相談すると決めたならば、最寄りの弁護士会にご相談下さい。それが一番確実です。(*7)⇨「弁護士会」