「質問する力」(大前研一著 文芸春秋)¥1,500
この手の題名の本は多い。
斉藤孝先生の本が一番売れているようですね。
わたしも質問は大切だと思います。そのことについて書くつもりはありません。
この本は、唐津一さんの本を読んで、次に気になったので読みました。
唐津さんも、大前さんも、アメリカのテレビ番組(生放送)に出て、平気で議論できる人たちです。ディベートのできる人たちなのです。
唐津さんの本には、「かけひき」がテーマですが、かけひきの前提となる情報の入手方法にも言及されていました。(「かけひき」が成立するのも前提に正確な情報があってのことなのですね)
それで、「質問」、「ディベート能力」、「国際性」というキーワードに関連する大前さんの本が読んでみたくなったのです。
大前さんは、アメリカ通。
どちらかといえばアメリカより、か。
贔屓目にアメリカを見るのではなく、アメリカとの接点が多く、濃いから、大前さんのお言葉は、そのように聞こえてしまいます。
しかし、アメリカの論理はそうなんだ、と気づかせてくれます。
また、かなり先を見た議論をされますから、まずはもうすこし身近なことから解決しないといけないのではないか、と思えるときもありますし、弱者への視点についてはどうかな、と思えてしまうときもあります。
それでも、理想を掲げることは大切ですし、理想を追いかけていく過程で、弱者の覚醒を期待し、また自助のための最低限の基盤つくりをしていくしかないのかも知れません。(ただ、それでもアメリカ的な理想ばかり追うならば、ひどい格差社会ができるだけだと思います。これから読もうと思っている本の題名のような「這い上がれない未来」が待っているかもしれませんし、なるほどと思わされた「下流社会」以上の厳しいものとなる可能性大だと思います)
わたしは、かつて「ハゲタカが嗤った日―リップルウッド=新生銀行の『隠された真実』」(浜田 和幸著)を読み、血税を投入した長銀を二束三文で外資に売却した政府の不良債権処理のやり方と関与したし東京の渉外事務所の姿勢に腹が立ったことがありました。
しかし、大前さんは、「こんなにおいしい買い物であったにもかかわらず、日本ではそれに食いつく勇気のある経営者はいませんでした。…それは日本人が長銀を買って再生しようとしたときには、…全然違う議論が出てくるからなのです。『おまえはそれでも日本人か。』」と書きます。
結局、外資に買い叩いてもらった新生銀行はうまくいき、独自で再生させようとしていたあおぞら銀行が執筆時(2003年当時)うまくいっていないのは象徴的だと書いておられます。
同様のことは、日産のゴーンさんにも言えると。
ゴーンさんが断行したリストラだから当然と受け止められ、成功した。これが日本人が同じことをしていたら、血も涙もない奴と叩かれてつぶされていたかもしれない、そもそも日本人の感覚ではできなかったし、リストラや関連会社を切っていくことはできなかったであろうと言われます。
そうか、そういうこともあるのだな、と恥ずかしながら納得しました。
この本は、今、文庫本でも¥500で出ています。
わたしは、アメリカより過ぎると言われる竹中さん、小泉さんの動きを、一方ではそうでなくリアリストであるだけだと思い、長銀問題では日本の法律家が関わりながら国辱的な売却を断行させてしまった点について釈然としないものを抱えていました。
かなりすっきりしました。
日本の進んでいる方向が今まで以上にクリアに見えた気がします。
そして、マッキンゼー式のピラミッドストラクチャーという分析法の紹介もあり、大変お得な本でした。