1.弁護士の仕事について
弁護士の仕事は、突き詰めれば、『個人・企業間の権利自由の衝突』を調整することにあり、その最たるものは、裁判であり、その中でも、損害賠償請求訴訟が中心です。
損害賠償請求訴訟は、損害の公平な填補が図られるようなしくみになっています。
2.「うつ病」と裁判(電通事件より)
損害賠償請求訴訟のなかで、最近目立つのが、従業員のうつ病の責任を勤務先会社の問う、という事件です。過重労働があり、うつ病と診断されてしまえば、直ちに会社の責任が肯定されてしまう、という傾向にあります。
電通事件は、気の毒にも、真面目な将来ある若者がついには自ら命を絶つという悲しい事件でした。
かなり無理な勤務状況で、会社側の責任が認められても仕方ない事件であり、そのとおりの判決が下されました。
『明らかな過重労働があるにもかかわらず、会社として何ら配慮もせず、漫然稼動させていた』という事情があれば、会社側が責任を問われてもやむを得ないと思います。
しかしながら、いくつか事件を担当すると、そもそも「本当にうつ病か?」「本当に会社に責任があるのか?」という事件に遭遇します。
一定の残業はあっても過重労働は存在しない。
業務上の指導はあってもハラスメントもない。
そして、「うつ病」の主張があるのですが、不思議なことに、趣味など仕事以外の活動は案外活発にされていたりするのです。