「ジョーからの贈りもの—若きサムライとの日々」ジョー トーリ著( アイビーシーパブリッシング )
野球の本です。
ニューヨーク・ヤンキースのジョー・トーリ監督の本。
松井選手が放出されていたら、きっと売れない本になっていたでしょう(よかったですネ)。
序章は、その松井選手が執筆。
松井選手の人柄がにじみ出てくるような素朴な文章です。
イチロー選手の本では、修行僧のような純粋さと計算された言い回しで、大変な才能とシャープさが現れた文章に感心したものですが、別の意味で感心しました。
松井選手の文章を読むと、彼が、おおらかで周囲の人を明るくする心優しい好青年なのだとわかります。そして、松井選手こそ天才なのだろうなぁ、と感じさせられました。
以後はトーリ監督の1人称で語られます。
第1章では、トーリ監督の生い立ち、成育環境が明らかに。ブルックリンで、ニューヨーク市警の父と母、男3人、女2人の末っ子に生まれた。いったん怒り出したら止まらない父の暴力は日常的で、母だけでなく子らにまで及んでいたといいます。姉が父を刺し殺そうとして包丁を身構え、父が娘に拳銃を向けて威嚇するくだりは、家庭がいかにすさんでいたかが窺い知れます。
そして、監督の役割論や人生論、各選手のことなどが書かれていて、ファンにはたまらない本でしょうね。野球中年のわたしもわくわくして読みました。
ビジネス書としても読めます。
トーリ監督は、といいますか、アメリカの成功したスポーツマンのほとんどは、人生哲学を持っていて自身のパフォーマンスを最大に保つための努力を怠らない人ですね。競争は厳しい、極端に厳しい。だから、心が強くないとやっていけない。考え方にブレがあってはモーティベーションを維持できません。
・常に今持っている力の100%を出す努力をする(それ以上を出そうとしても無理)。基本をおろそかにせず、常に上を目指してその力の底上げの努力を日々怠らない。
・人は職場でも家庭でも礼節をわきまえるべし。
・いつだって誰であってもピンチをチャンスに変えてしまうことができることを忘れるな。
・逆境を乗り越えるものはプラス思考とユーモアと揺るぎない平常心。
・相手に対して気を配っていれば誤解を避けたりもつれた糸をほぐすこともできる。
・ユーモアが言えなければ笑顔のひとつ見せるだけでもいい。
・人格者であれ、時間を大切にしろ。
・恐れを捨てて挑んだ結果が勝敗の行方を一瞬で変える。
読んで行くと、トーリ監督がいかに他の存在に対して敬意を払っているかがわかります。他者や他の生き物、環境、文化、その他一切。
きっといちばん自身に対して敬意を払っているのだろう。
自身の人生を大切に思っているからこそ、そして一所懸命に行きているからこそ、他の存在のありがたさが本当にわかるのでしょう。目先の利益のために付け焼き刃で彼のように振る舞うことはできません。
『本物』に近づき学ぶことが自ら『本物』になる道だと思います。
『本物』って何でしょう。
やはり、人で言えば心の姿勢のような気がします。
一般的抽象的に一言で言えば、『本物』とは、人の心や社会を明るくする人や物やサービス。
いろんな『本物』に出会い、自分自身もそのような人になりたいと思います。そのような物やサービスを提供し、紹介できるようにしたいと思います。
明日も、がんばって行きましょう。