「全脳思考モデル〜クイックスタート」(第4章)
知識社会でビジネスは「アツアツのパイ巡ってライバルと顧客を奪い合うのではなく、食べてみたいと思わせるパイを作り続け」るようなものでなければならない。
「企業や商品」は「物語」を持たなければならず、その「会社や商品が持つ物語は、買い手が自己投影できる内容のものでなければならない」といわれている。
「物語」はどうやって作るのか?
これは、企業内外のマーケッターが解決を切望し、悩むところである。
著者は、ズバリ言う。「(売り物になるような物語は)意図的に作れるものではない」と。
我々にできることは「準備を整えていること」だけであり、準備ができた人にだけ「物語」は「降ってくる」のだという。
「全脳思考モデル」は、「準備」のためのツールであるようだ。
「全脳思考モデル」は、紙一枚のチャートとして形式的に存在し、その内実は、「物語を溢れさせる中核」=「ストーリー・ストリーミング・コンセプト(SSC)」であるという。
「物語」は小賢しい作為からは生まれない。
我々に許されるのは、「物語」が生まれてくる「場」を用意し、チーム作業であればそれを共有し、「場」を温め、育てて辛抱強く待つことだ。
「場」は真っ白な状態から、顧客イメージを固め、その顧客が「120%ハッピー」になるという結末から逆算して考えていく。
現状ベースで考えるのではなく、結末から逆算。未来から考える。
これは、苫米地さんの、「時間は未来から過去に向かって流れている」という言葉を思い出させる。
過去、現在ベースで考えるのではなく、理想的な結末、理想的な未来から考えるというのは、立花大敬師の「心はゴムひも」をも思い出させる。
理想的な未来に心でゴムひもをくっつけて、後はあれこれ考えないで、今ここを一所懸命にやっていくべしという。
この思考を、紙の上で行っていく。
可視化することで、情報は整理され、求めるものを明確化しやすい。
また、チームでの共同作業も可能となる。
「全脳思考モデル」は、それを知ったらすぐに利益が出せるという類のものではない。「90日であなたの会社が儲かる」「非常識な成功法則」で紹介されたようなノウハウ的なものではないけれど、ずっとずっと射程距離は長く、かつ、大きなものを獲得できる潜在的力を持ったアイデアだと思う。
詳しくは、本書を手にとられるのが一番だ。
この章で特に印象に残っているのが、ビジネスマンは、今や、顧客の120%の希望を満足させなければならないというくだりだ。
100%では、対価と同じであり、満足はあっても、感動や物語の後日談に発展していかない。
常に顧客の欲求のさらに少し上で結果を出すよう努力していかなければならない、と心しておこう。