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愛知県名古屋市中区丸の内 弁護士加藤英男の日々是精進日記(ツィッター:@BengoshiKH)
by bengoshi_358
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カテゴリ:労働法( 1 )
停職中の旅行とSNSへの旅行記事の投稿と懲戒免職処分
停職処分期間中に旅行に行き、SNSに記事を投稿していた職員に対し、懲戒免職処分を行った事案について検討してみます。

ニュース記事で明らかにされている事案の情報は、以下のとおりです。
・ 兼業禁止規定に違反し、6か月の停職処分
・ 旅行に行き、SNSに記事を投稿(1回目)
・ 上司から注意・ 再度、同様の行為(旅行に行き、SNSに記事を投稿?)(2回目)
・ 住民からの批判あり・ 町は、「(地方公務員法33条の)信用失墜行為に当たり、反省も見られない」として、(同法第29条1項により)懲戒免職処分とした



本件は、町の職員に関するものですが、
まずは、民間の場合であればどうかという観点から考えてみましょう。

民間の場合、一般に、懲戒処分が有効とされるためには、
(1)就業規則などに根拠となる規定が定められていることが必要です。

そして、(2)下される懲戒処分が、労働者が行った問題行為と均衡がとれていることが必要です。
要するに、極端に重いものであってはならない、ということです。

さらに、(3)適正手続を踏む必要があります。
懲戒処分は、一種の制裁であり、労働者にとっては大きな不利益処分であるので、公平・公正さが強く求められます。具体的には、予め就業規則などで具体的に定められ、同じ事柄で二度も三度も処分することは許されず、労働者には処分に先立って弁明の機会を与えることが必要になります。

これら、(1)〜(3)を満たさない処分は、無効とされます。


本件では、形式的要件である(1)、(3)がきちんと満たされていることを前提に、
実質的要件である(2)が最も検討されなければならない点です。

(2)は、最終的には、裁判所により、「社会通念上相当として是認できる」かどうか、で判断されます。

具体的には、
①労働者の行為の性質・態様(行為の内容と悪さの程度)、
②結果(企業秩序への影響)、
③情状(過去の処分歴や反省の有無)、
④使用者の対応(他の労働者への処分との均衡その他)などが、判断の要素とされます(水町勇一郎著「労働法(第5版)」p.167)。



では、本件の場合、懲戒免職は、「社会通念上相当として是認できる」と判断されるでしょうか?

本件事案に即して考えてみましょう。

<判断要素:①労働者の行為の性質・態様(行為の内容と悪さの程度)>
①について、労働者の行為は、「6か月の停職期間中の旅行であり、かつ、SNSに旅行記事を投稿したこと」 「上司から注意を受けたにもかかわらず、これらを繰り返したこと」です。
停職期間は、余暇を楽しむ期間ではなく、原因となった問題行為について反省をし、勤務再開のために心身の備えをなすべき期間です。
旅行をし、旅行記録をこれみよがしにSNSに投稿するということは、停職処分に対して、何らの反省のない態度を表明するものであり、組織内の規律秩序に反する行ないです。
さらに、かかる行為に対して、上司から注意を受けたにもかかわらず、同じ行為を繰り返したことも、同様です。

<判断要素:②結果(企業秩序への影響)>
②について、SNS記事を通じて、組織内構成員や町民らに知られ、町民から批判を受けることとなり、組織の信用は大きく傷つき、組織内秩序も大きく傷つけられたものといえます。

<判断要素:③情状(過去の処分歴や反省の有無)>
③について、停職期間中にはふさわしくない行為に及び、その点、上司から注意を受けたにもかかわらず、再度同様の行為に及んだことは、情状として非常に芳しくないものといえます。

<判断要素:④使用者の対応(他の労働者への処分との均衡その他)>
④については、ニュース記事からは明らかになっていません。



本件事案の処分は、民間企業であれば、懲戒解雇。いわば、懲戒処分の中でも、最も重い、最終処分です。

それゆえ、労働者に改善の余地がない、労働者を在籍させていては組織内秩序が保てないほどに組織内秩序が侵害され、あるいは、組織の信用が失墜させられたという場合でなければ、「社会通念上相当として是認できる」とは言い難いです。

仮に、本件事案が民間企業の労働者が対象者であった場合、停職処分の理由、企業の規模、労働者の地位・職種、その他具体的事情によっては、やや厳しすぎる処分であるとの印象も受けます。
しかし、本件事案は、対象者が、勤続10年近い、公務員である町の職員であり、町民の信頼・期待を裏切り、町の信用を大きく傷つけています。
そして、対象者は、上司からの注意にもかかわらず、反省もなく、再度、同様の行為を繰り返しています。

そうしますと、組織の信用・組織内秩序の侵害度合いは重く、情状も軽くはなく、その他記事に現れていない情状、町側の対応状況の詳細によっては、やむを得ない処分と判断される可能性が高いのではないかと思われます。


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by bengoshi_358 | 2016-05-04 23:11 | 労働法
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