「心」(ラフカディオ・ハーン著、岩波文庫)
この本の中の、「ある保守主義者」という作品があります。
そこに、日本に帰る船の中から富士山を眺めるくだりがあります。
はじめて日本へ来たのであろう、外国人たちが、「富士山はどこだ、見えないではないか。」と船員に文句をつけます。
船員は、笑いながら答えます。
「ああ、あなたがたは目のつけどころが低すぎるんですよ。もっと上を見てください。もっと高いところを。」
外人たちが目を上げてみると、うす桃色に彩られた美しい山頂が見えたといいます。
わたしたちは、得てして、目の前のことしか見えません。
目の前の人とこと、ものを大切にするということは良いのですが、先を見る。
大局的に物事を見る。
そういう前提があってのことなのですね。
わたしたちは、悩みのタネ、怒りのもとがどんなものなのか、その実体や全容を知ること無しに、苦しむことがあります。
心に苦しみが生まれたとき、この言葉を思い出すようにしたいですね。
「ああ、あなたがたは、目のつけどころが低い。もっと上を見よ。もっと高いところを。」(p.200)