井上先生は、その昔、法曹同人という出版社から(はじめのうちは、東京化学同人)、多数の司法試験参考書を出版された方。
どれもレベルが高く、とても司法試験に合格されたばかりの方の著書ではない、という評判の本でした。(当時は、司法試験に縁のない生活を送っていたわたしには、井上先生のご著書もまったく縁がありませんでしたが。)
わたしも、司法試験の受験を志すようになってから、数々の井上先生の著書に触れ、殆どの科目で、「目から鱗」体験をしました。
刑事、民事、一般教養とオールマイティに近い方。
若くして、白髪の紳士であり、ストイックなオーラが漂っていた方でした。
この「現代不法行為論」(中央大学出版部)で、わたしが感動したのは、共同不法行為論の一節です。
平井教授の学説を敷衍しているのですが、とてもわかりやすいです。
また、刑法にもお強かった井上先生は、「客観的な行為の共同」がなけれなならないという、刑法における共同正犯を思わせるような書き方をしてくださっているのです。
これは、実は、わたしがかつて、ある大型事件で、弁護団の中にいたときに、下っ端の者として書いた、準備書面の原稿に近い理論構成なのですね。
「あるべき共同不法行為論は、きっと、こうだ!こうなっていかなければいおかしい!」
そう思って、青くさい気持ちで書いたのでした。
でも、エライ先生方により、却下。(結果、なんとも理論構成のすっきりしない書面になってしまい、いささかがっかり。〜失礼)
そのときの忸怩たる思いが、スッキリしました。
今なら、井上先生の論述を引用し、よりいっそうきちんと書けるような気がしています。
…と、あまりに個人的すぎるのですが、これが感動した理由です。