「幕末日本を救った先見力と胆識 〜逆風の中の名リーダー」(新井喜美雄著 プレジデント社)
維新政府に襟を正させた非凡な胆識、と評される人。
河合率いる長岡藩軍と、山県有朋率いる薩長土肥の西軍との戦いと評価が書かれています。
武装中立の立場を維持し、そのために必要なあらゆる施策を実行し、さらに万一の場合の戦略・戦術も用意していたリアリスト。
武装中立の理想は打ち砕かれたものの、山県はじめとする西軍首脳の心にはその名を刻み付けました。
河合の戦死、長岡藩の降伏という結末からは、「国家間の安全保障については、いわゆるハリネズミ論は成立しないことが証明される」と書かれています。
その理由は、「国家のような組織の場合には、『一将功あって万骨枯る』のたとえのごとく、組織の頂点にある者は常に安全な位置にあり、いかに多数の部下や国民に被害が及ぼうとも、最終的に勝利を収めれば、その栄光は自らの上に輝くことを知っているからである」と。
ハリネズミ程度の防衛力では軍事大国と戦っちゃいけません。
大国に囲まれて武装中立は絵空事。
非武装中立なんてとんでもない。
国家を率いるリーダーは、現在の情勢についての正しい情報収集と、時代の流れを読んだ先見性、国民の利益のため国民が生き残るためには一時的に朝令暮改と批判されても豹変できる柔軟性、一言で言えばリアリズムの人であって欲しいですね。
河合もリアリストでしたが、そのときは長岡藩の責任者としての足かせがありました。そうせざるを得なかった。立派な武士として散って行きました。仕方なかったけれど、もう少し長生きしてほしかった人でしたね。