弁護士の役割は、クライアントから事情を聴いて、証拠に基づいて確認できた事実を法律に当てはめて、裁判所の判断をクライアントにより有利に導くことにあります。
一般の民事事件では、まさに上記のとおりです。
民事訴訟では、技術的な部分も少なくなくありません。
訴訟で主張するにふさわしい事実、それら事実を証明するに十分な証拠、適用法令、敵方の主張事実や提出証拠の認否…等、様々な取捨選択や決断、判断が必要になります。
ですから、一般の民事訴訟、即ち、裁判になってしまったら、専門家である弁護士に依頼されるのが安心です。
では、離婚事件ではどうでしょうか?
もっとも、離婚などの家事事件に関していえば、弁護士の役割はもう少し広がります。
当該紛争から派生して色々生じる疑問や不安を解消してくれるコンサル、カウンセラー的な役割もあります。
もちろん事案によっては、それまで相手方から押されていた事件について、主張されていなかった事実、見落とされていた証拠を発掘して逆転という、弁護士が本来の役割を発揮する場合もあります。
でも、離婚事件では、純然たる当事者対立構造ではなくて、家裁が後見的かつ公権的立場から、証拠を自ら収集確認し、両性及び未成年者の福祉の見地から妥当な判断をするという建前がありますから、弁護士が大活躍するというケースは稀ではないかと思います。
そもそもが調停に限っては、弁護士を立てないでも当事者だけで手軽に利用できる手続ですから、まずはご自身で始められてみるのが良いかもしれません。
調停委員や調査官に対しては、誠実に、一所懸命に説明し、わからないことは素直に教えを乞うならば、裁判所も公平に反しない限度で指導はしてくれます。
問題は、昨今では家事事件の本来のあり方(後見的&公権的関与)から離れ、一般民事事件のような当事者主義(自己に有利な主張や証拠は自分で探して提出しないと取り上げてくれない)的な手続進行をされる場合もあります。
ですから、事案がDVだったり、多額で多岐にわたる夫婦共有財産があるとか、慰謝料請求がしたい等という場合でなければ、まずはご自身で始めてみる。
そして、調停の中で、調停委員の言葉や、手続の進め方に不安を感じられるようなことがあれば、その時点で弁護士に相談されれても遅すぎることは少ないのではないかと思います。
離婚調停における弁護士は、例えて言うならば、マラソンの伴走者。
サファリレースのナビゲーター。
登山のガイド、シェルパ。
そういった役割もありますから、初めからそういうサポートが欲しいという方はそのようにされたらよろしいのではないでしょうか。
離婚裁判になれば、手続がきちんと整備され、技術的側面が強くなってきますので、離婚だけという単一争点の事件でもない限り、弁護士に相談されるのが良いでしょう。
(※弁護士ドットコム・みんなの法律相談への回答に加筆)