「先生は本当は気が短いのでしょう?」
何年かに一度、クライアントさんからズバリ当てられる。
(そうです、確かに私は短気です。。。)
別の人のお話をひとつ。
私の敬愛する某先輩はいつもにこにこ。
誰に対しても、いつでも当たりがやわらか。
ある事件で一度だけ当たった。
代理人のみ同席調停で理屈面、証拠で固められる事実関係の確認を行っていた。
やっぱりにこにこやわらかく、丁寧な対応。
純理詰めの法律家同士らしい応酬が続いた。
何度目か、調停委員の先生が、いくらか大雑把なことをおっしゃった。
その時、その先輩は怒り出された。
それまで温和な話しぶりで理性的な対応でみえたが、顔色が変わった。
弁護士(法廷弁護士、町弁)は、他人の紛争解決に首を突っ込む職業だ。
紛争嫌いのとことん温和な人には務まらない。
他人と当事者のはざまで怒ったり悲しんだりしなければ、いい事務処理はできない。
昔から言われている。
当事者のように熱くなりすぎてはいけない。
他人のように冷淡過ぎてはいけない。
温和でやさしいだけの弁護士なんて1人もいない。
東北の実業家織田大蔵は弁護士は闘犬に過ぎないと言い放ったが、かなり当たっている。
多くの弁護士は、多分短気だと思う。
戦術家は状況に応じて変化しなければ勝てないことを知っている。
状況を見て判断していく。
そして、多分怒りっぽい。
いくらかの正義感をもって仕事をしている。
「これは許せん」と思う気持ちがあるから力も出る。
なんとかせにゃ、という怒りのパワーが背中を押してくれたりする。
他人のことでもすぐに怒れる感性。
別になんとも、と思う人はこの道に入ってこないだろう。
「闘わない弁護士」に見える数々の人も、その実態は短気で怒りっぽい。
訓練されて、いくつかの失敗で学ばされ、そのリアルな実態を発動させる方法と時期を知っているだけ。
先ほど触れた某先輩だけは特異な才能と訓練で、どんなときも顔色は変わらないと思っていたが、あの時以来、我々は皆短気であり、怒りっぽいのであって、それを巧妙に隠しているのだと理解し、上記の結論に至った。
幼少の頃からよく知っている何人かの同業者の当時のことを思い出すと得心する。
私の同じ学校の同級生やとなりの組だった人は、弁護士では4人いる。
皆私よりも優秀で私より何年かは早く合格しているけれど、皆、概して短気だったように思う。
もっとも、渉外弁護士や巨大事務所で上場企業の法務ばかりうやってる弁護士の場合は違う人もいるかも知れない。