注文者X:工事を1000万円で発注。
請負人Y:工事を85%終えたところで放棄。
注文者X:残りの工事を別の業者Zに発注、工事費用として300万円払う。また、遅れたたために生じた損害が50万円あった。
原審は、Xの損害金として350万円(300万円 + 50万円)を認容した。
(請負人Yの注文者に対する報酬請求につき、850万円認容)
ところが、
最高裁はこれではいけないという。
最高裁は、
Xの損害は200万円だよ、という。
どういうことか?
Yは、85%しか工事を終えていないので、その割合でだけ報酬を請求できる。
そこで、Y → X の請求では、850万円を認容した。
これはこれでいい。
150万円は、当然だけどもらえない。
Xとしては150万円払わずに済んだ。当然だけど。
(もともとXは1000万円払うつもりだったし、多分、1000万円かかる仕事だったのだろう)
Xとしては、残りの15%を仕上げなければならない。
15%仕上げるには、150万円は覚悟すべきだ。
残りの15%にはそれだけの価値はあるし、そう予想していたはず。
完成による利益は発注者が享受するのだから、当然発注者であるXが負担するべきだ。
とすると、
残り15%仕上げるために、Zに対して300万円払ったとしても、本来的には150万円ではXは当然負担べきであったので、この150万円は損害と評価してはいけない。
とまあ、こういうこと。
Xの損害は、
Zに払った300万円から本来的には15%の残りの工事のために支払うべきであった150万円を引き算した金額だ。
それと、
遅れによって別に50万円の損害が出たのなら、それも払わなければうけない。
これを合計して、200万円。
これを法律相談で説明するようにもっと分かりやすく言うと、こういうこと。
で、Yの途中放棄があって、そのせいで、結局においていくら払ったの?
整理して考えてみよう。
・Xは、Yに対して、85%相当分の850万円を支払った。
(1000万円ではない。結果において、裁判所は、85%相当分でいいとした)
・Xは、Zに対して、300万円支払った。
・Xは、これとは別に、遅れたせいで50万円損をした。
<合計>850万円 + 300万円 + 50万円 =1200万円
では、Yが初めからちゃんと工事完了していたら、いくらで済んでいたのかな?
言わずもがなの、Yと約束した1000万円。
負担したのが1200万円。
本来払わなければいけなかったのが1000万円。
引き算で、200万円。
…と、こういうことだ。