ある会社が商工ローンから借入をしていました。
その後、その商工ローンがその会社に対する貸金債権につき、ある金融機関に債権譲渡をしました。
それで、その会社は、譲り受け人である金融機関に対して、返済を続けていました。
ところが、利息制限法に基づく惹き直し計算をしたら、大幅な過払いであることが判明しました。
にも関わらず、金融機関は、会社に対して、「過払金は、元の債権者に請求してください。借金の返済は、当方に継続してください」と言ってよこしたそうです。
金融機関からの請求については、大いに疑問があります。
理由は、既に、債権譲渡時において、過払金が発生しているからです。
即ち、債権譲渡時において、残債務はゼロになっているからです。
債権譲渡とは、債権者の交代であって、債権がその内容を変えないで、従前の債権者とは別の人ないし会社に移転することをいいます。
ですので、ゼロのものはあくまでもゼロでしかありません。
但し、例外もあります。
債権譲渡に際して、会社が、「異議なき承諾」をしてしまった場合です。
要するに、会社に対して、「債務が存在することは承知しています。きちんと今後はおたくにお支払いします。」というような内容の書面に署名押印をしてしまった場合がそれに当たります。
(この場合、会社が金融機関に支払った分は2重払いになるので、公平の見地から、もとの債権者に対して返還請求ができます。)
なお、元の債権者に対して支払った過払金の返還を、金融機関に対して主張することはできないと思われます。
理由は、通常の債権譲渡と思われるからです。
契約関係がそのまま移転すること、言い換えると、債権者たる地位の移転まであるならば、過払金返還債務も金融機関が承継していると言えますので、その金融機関に返還請求ができることになります。
但し、過払金発生後に、会社が金融機関に対して返済をした分は、その金融機関には保持する権利はないので返還請求をすることができることになります。